リオデジャネイロに行くならブラジルの貧困街ファベーラに行こう

ブラジル

背景知識:ブラジルのファベーラとは何か

ブラジルのファベーラ、それはリオデジャネイロの豊かなビーチや煌びやかなカーニバルの影に隠れた、別の顔を持つスラム街、コミュニティです。これらの地域は元々、正式な住居を持たない人々が自らの手で建てた家屋群から形成され始めました。今日では、ファベーラは社会的、経済的に困難な状況にありながらも、独自の文化と絆で結ばれた密接なコミュニティとして知られています。

ファベーラ(favela)という言葉の語源は、ブラジルの一部地域に自生する「ファヴェーラ」という植物に由来しています。歴史的には、ブラジル北東部の乾燥した土地で育つこの植物が茂る丘が、貧しい退役兵たちによって初めて住居地として使われたことが始まりです。

1897年、カノスの戦い(Canudosの戦い)から戻った退役兵たちがリオデジャネイロに到着し、政府から住居を提供されることを約束されていました。しかし、約束が守られなかったため、これらの兵士はリオデジャネイロのプロヴィデンシアの丘に自分たちで住居を作り、この地を「モロ・ダ・ファヴェーラ」(Favela Hill)と名付けました。これが現在につながる「ファベーラ」という言葉の由来となっており、その後、不正規居住区全体を指す言葉として使われるようになったのです。

今回訪問したロシーニャのファベーラは、リオデジャネイロの中でも最大で、登録されているだけで7万人の住民が暮らしています。ロシーニャはコルコバードの丘のふもと、つまりキリスト像が見下ろす位置に広がっており、観光客もしばしば訪れる場所です。この地域は、ファベーラの丘から見えるその壮大な眺望とともに、富める者と貧しい者の格差を垣間見れる場所として知られています。

手前側がファベーラ、海沿いに見えるのが高級マンション

また、ロシーニャでは、地元のアーティストによる壁画やストリートアート(グラフティ)が多く見られ、これらの作品から地域の文化的アイデンティティを垣間見ることができます。また、教育や若者の支援に力を入れる多くの非政府組織が活動しており、子どもたちにより良い未来を提供しようと努力しています。

旅のTips:ファベーラの訪問にはツアーを申し込もう!

せっかくリオデジャネイロを訪れたのであれば、観光地である綺麗なビーチやコルコバードの丘だけでなく、ブラジルの負の部分、ファベーラもぜひ見学することをオススメします。
また見学の際は安全面や背景理解の面でツアー参加することを推奨します。
ツアーは毎日のように様々なツアー会社によって実施されており、相場は5,000~6,000円くらいかと思います。一応、ネットだけでなく現地の代理店も確認しましたが料金は大きく変わりませんでした。
おそらくですが、ツアー代金の中にNGOへの寄付やコミュニティへの見学費用が含まれており、安全の保証料も含まれた価格設定かと思います。

ツアー時間は約半日。ロシーニャのツアーであれば、コパカバーナビーチで集合し、往復2時間の移動時間、2時間の現地滞在で合計4時間のツアーが多いです。

また、一部のユーチューバーの中にはツアーではなく個別にファベーラを訪れる人もいますが、個人で訪問するのはとても危険なので避けましょう。ファベーラは不法占拠する形で築かれた住居群であり、リオのファベーラはすべて3大マフィアによって管轄されています。部外者は立ち入り禁止や撮影禁止のエリアも多くあり、何も知らずに立ち入ったり撮影をしてしまうと、マフィアとのトラブルに遭い、最悪殺されてしまうこともあり得ます。

ぶっちゃけ感想:コミュニティの絆は考えさせられる

結論、ファベーラ訪問はブラジル旅行の中でも「体験してよかった経験」の一つでした。
私はもともと途上国支援などの仕事をしていましたので、こうしたファベーラのような貧困課題については関心はありました。実際に訪問すると、もちろんゴミ溜まりによる不衛生さ、貧しさ、新鮮な空気から程遠い住居など、いろいろと感じることが多くありましたが、それよりも非常に印象的だったのはファベーラに住む人々の強固な絆です。

今回、ツアーガイドしてくれた方はファベーラ出身の方でした。彼がファベーラに入ると、彼を知っている多くの知人や友人が彼の元にやってきて挨拶したり握手をしたりして友情を確かめ合ってました。
またファベーラに住む人々も、家族のようにお互いにそれぞれの家庭環境や生活環境を知っており、時には助け合いながら暮らしていると聞きました。貧しいながらもそこには笑顔が溢れており、非常にウェットな人間関係がありました。
私はこのウェットな人間関係を羨ましいと感じました。もちろん、貧困や不法地帯というのは大変な社会課題ですし、健康面にも大きな影響を与えるため肯定することはできません。それでも、「人間らしくあること」を見せつけられ、私たちは富とともに大切な何かを失ってしまったのではないか。そのように感じました。

ファベーラ内にあるレストラン

ファベーラの丘からは、貧しいスラム街と、そのすぐ横に並ぶ高級住宅を一望することができ、たった数キロ、数十キロの違いでここまで人々の生活や人生が変わるのか、ということについても非常に考えさせられました。このような格差のある世界の中で、自分自身はどのように生きていくべきか。どのように世の中に貢献できるのか。そのようなことを帰りのマイクロバスの中で考え、帰路につきました。

あとがき;ファベーラの実態がよく分かる映画

リオデジャネイロのファベーラの様子を的確に描写した映画があります。
知る人ぞ知る有名な映画、『シティ・オブ・ゴッド』です。

2002年に公開されたブラジルの映画で、リオデジャネイロのスラム街「シティ・オブ・ゴッド」を舞台にしています。この映画は、1960年代から1980年代にかけての20年間を追い、スラムで育った少年たちの成長と犯罪への足を踏み入れる様子を描いています。

映画は、ギャング間の抗争、裏切り、友情、そしてサバイバルを描きながら、スラム街の厳しい現実と若者たちの生きざまをリアルに表現しています。『シティ・オブ・ゴッド』はその衝撃的な内容と斬新な映像で国際的な評価を受け、ブラジル映画の傑作とされています。

ぜひ、実際のファベーラを訪問する前に予習の意味で観ておくと良いと思います。

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